2017年11月30日 18時50分更新
P2P保険とは、保険の加入者同士が少人数のグループをつくり、加入者が払う保険料金の一部をプールし、少額の保険請求があった場合にはその中から保険金を支払い、プールを超えた分については外部の保険会社から支払うという仕組みにより運営される「Peer to Peer」型の保険サービスのことを指します。
お互いの持ち出しから保険料が支払われるだけではなく、一年間保険の請求がなければ翌年の保険料をディスカウントされるという仕組みなどもあります。そうなると保険の加入者は保険の請求が起こらないようにお互いに支援しあうインセンティブが働きますよね。個人同士の信頼関係により保険料を低減できるこの仕組みは「ソーシャルインシュランス」とも呼ばれています。
このP2P保険の分野でとても注目されている企業が、米国ニューヨークに本拠を置くスタートアップ企業のLemonade(レモネード)。
Lemonadeの保険は、ただ単に最先端のテクノロジーを活用してユーザーの利便性を向上させただけではなく、保険加入者が支払った保険料のうち、請求がなかった余剰金をチャリティに寄付するというユニークなものです。
Lemonadeは、米国ニューヨーク州に住む賃貸人や物件オーナーに対し、家財道具に対する保険を提供しますが、ユーザーは使い慣れたメッセージアプリ形式のUIでLemonadeのチャットボットとやりとりを行うことで、自身に合った保険プランと料金を簡単に知ることができ、内容が固まれば、そのままアプリから申込むことで保険への加入は完了します。
当然、保険金の受け取りも簡単で、家財の破損や盗難など事故が発生すれば、チャットとウェブカメラを通じてLemonadeに報告すれば、すぐにオンラインで支払いが完結する仕組みとなっています。
しかし、同社のサービスの肝は、ユーザーに対して保険の加入時に自分の関心があるコーズ(社会的課題)を選択させる点にあります。ユーザーは、ニューヨーク州の貧困支援、女性の支援、病児支援など、Lemonadeが提示するいくつかの選択肢の中から自身が貢献したいテーマを選ぶことで、保険が未請求だった際の保険料をそのテーマに関連するチャリティに寄付できるのです。
同じテーマを選択した加入者は、バーチャル上の”Peer”(仲間)となり、同じコーズを支援する同志として、できるかぎり保険の請求が発生しないようにお互いを支援しあうことで、より多くの寄付ができるようになります。まさしく「ソーシャルインシュアランス」です。
Lemonadeは未請求分の金額を全てチャリティに寄付するという仕組みのため、保険金の支払いに対する「負のインセンティブ」が生じません。
「相互扶助」という保険本来の目的をテクノロジーによって取り戻し、さらにその利益をコミュニティ全体へと還元していくという同社の保険は、理想とするビジネスモデルと言えると思います。
保険は相互扶助が原点。商品そのものが原点回帰しようとしています。
「Peer to Peer」について、何が出来るか、まずはトライしていきましょう。
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