2011年12月27日 14時06分更新
振り返ってみると、2011年も外国為替相場のトレンドは円高基調であった。対米ドル、対英ポンドなどの通貨は、変動相場制導入後の最高値を更新。
未だ最高値からの戻りも鈍い状況。とはいえ、ここまで円高が進めば、いずれ円安に反転、2~3年前の水準に戻るだけでかなりの為替差益が得られると皮算用する人もいることだろう。筆者の周りにも、秋口から外貨投資を始めたいという人が大勢いた。普段、投資に縁遠い人まで「外貨預金をしたい」などと言い出している。いわゆる値ごろ観から外貨投資に興味を持たれたと思われるのだが、筆者は値ごろ観で外貨投資をするのは止めたほうがよいと全てブレーキをかけてきた。その見通し(考え)を変えるつもりは当面ない。もちろん、一時的にリバウンドで円安に戻る局面もあるだろうが、あくまでもリバウンドであって、トレンドの転換ではないからである。
外貨投資にブレーキをかける理由は、わが国の実質金利が、他の国と比較して高止まりしているためだ。わが国の政策金利は0.1%、米国=0.25%、ユーロ=1.0%、オーストラリア=4.25%などというように、先進国の中では最低水準である。
普段、私たちが見聞きしているこれらの金利は名目金利で、先に述べた実質金利ではない。実質金利とは、名目金利から物価の上昇率、いわゆる消費者物価指数を差し引いたものである。2011年10月の消費者物価指数を用いて計算した実質金利は表の通り。
名目金利は最低水準であったのに、実質金利はオーストラリアに次いで2番目に高い。なぜなら、わが国の物価だけが恒常的に下落し続けるデフレになっているからである。
この実質金利が逆転、あるいは逆転まで行かなくても、2国間の金利差が継続的に大幅な縮小方向に向かわなければ、円高トレンドが転換することは難しいと思われる。
遠い将来まで見越せば、実質金利の逆転や大幅な縮小もあることだろう。
だが、投資家から見れば、なるべく安い水準、逆の見方をすれば大幅に円高が進んだところで外貨投資を始めたいはずである。いつかは円安に転換すると思い外貨投資を始めたはいいが、円高がどんどん進むのを見ているのは気分がよいものではない。
ベストのタイミングを計るのは至難の業だが、足元の水準が外貨投資を始めるベターな水準とも思えない。筆者は、ベターな水準が到来する局面でさえ、かなりの時間を要すると予測している。
本当にお客様のことを思うならば、時にはブレーキをかけてあげる(=ブレーキをかける理由をきちっと説明する)ことも大切なアドバイスと思われてならない。
それでも、お客様が投資したいと考えているのを体を張ってまで止める必要はないが・・・・。
なお、日本、米国の政策金利は一定の幅を持たせているためその上限の数字である。
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