2019年02月07日 18時13分更新
簡素な補償内容で身の回りのトラブルに備えて手軽に加入できる少額短期保険商品の利用が広がってきたと報じられました。売上高にあたる保険料収入は2018年度に初めて1000億円規模に達する見込みとのことで、元少額短期保険業者の社長をしていたこともあり感慨無量といった感じです。
スマートフォン(スマホ)を使い、保険とITが融合したインシュアテックの「実験場」ともなっていて、保険会社子会社や大手企業子会社として少額短期保険業者も増えています。若年層の取り込みを狙い、新興勢と大手の競争が激しくなってきています。
念のためですが、保険金額の上限が1000万円以内、期間が2年以内に制限された保険が少額短期保険と呼ばれ、伝統的な生損保の商品と比べると補償内容がシンプルで保険料も安いのが特徴です。死亡時の保障を葬儀費用にあてる数十万~100万円程度に抑えたものや、家財が壊れたり、ペットが病気になったりするといった特定のトラブルに備える保険が主力であることも特徴の一つ。保険会社の「特約」的補償を主契約としているイメージが一番わかりやすいかと思います。(詳しく勉強したい方は、東洋経済新報社「不要な特約をやめて少額短期保険にしなさい!」を購入して読んでみて下さい。)
また、従来型の生損保会社が免許制で資本金が10億円以上必要なのに対し、少額短期保険業者は当局の規制・審査が緩い登録制で資本金は1000万円以上で済みため、異業種の参入もしやすくなっています。ヤマダ電機の子会社が少額保険業者をM&Aしたといったニュースも最近でしたね。異業種企業は、そもそも「マーケットそのものを保有」していますから強いですよね。例えば、東急不動産系の東急少額短期保険も「グループのスキー場やゴルフ場などの利用者向け」に、プレー中のトラブルを補償するオンデマンド型の商品を投入したり、有線放送でお馴染みのUSENの子会社、USEN少額短期保険社も「有線放送を導入している飲食店や小売店」にテナント保険を販売しています。
利用目的が明確で少額・短期のオンデマンド保険はスマホとの相性が良く、海外ではスタートアップの米レモネードが賃貸入居者向けに月額5ドル(約550円)から家財保険を提供し、スマホを使った手続きや余った掛け金を寄付する仕組みで利用者を増やしています。レモネードは超有名ですので、保険業界にいて知らないと恥ずかしいので覚えておきましょうね。
日本では、LINEが損害保険ジャパン日本興亜と組んで18年10月に売り出した「LINEほけん」が有名です。スキー、自転車、飲み会など特定の場面のケガなどに絞って補償し、保険料は数百円程度に抑えるというもので目的が明確なところが良いと考えています。
大手が目を向け始めた中、少額短期保険業者は、独自性の高い商品・サービスで顧客をひきつけたり、逆に大手と組んだりすることが必要になりそうだと思いますね。
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