2013年06月06日 05時41分更新
女優のアンジェリーナ・ジョリーさん(37歳)が、乳がん予防のため両側の乳腺切除と乳房再建手術を今年初めに受けたというニュースがありましたね。2013年2月2日に乳頭部分に最初の手術を受け、2月16日には乳房の切除手術、4月27日には乳房再建手術で一連の処置が終了しました。
欧米人と比べて日本人には少ないとされてきた乳がんですが、食生活やライフスタイルの欧米化に伴って、日本人女性の患者数は急増しています。2004年には乳がんと診断された患者数は5万人を超え、一生の間に乳がんになる確率は16人に1人と推定されています。乳がんにかかる人は、30歳代から増加し始め、50歳前後をピークとして減少する傾向にあります。
「がんが遺伝子の病気である」ことはよく知られた事実ですね。何らかの環境因子により遺伝子が傷害を受け、遺伝子の変異が起きます。この変異した遺伝子により1個のがん細胞が生まれます。
生殖細胞系列の2つの遺伝子、BRCA1とBRCA2の変異は家族性の乳がん発症と関連していることが分かって来ました。この家系の女性でこれらの遺伝子が発現している者は、そうでない女性に比べて乳がんに罹患するリスクが極めて高いようです。
近年、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群(Hereditary Breast and Ovarian Cancer Syndrome; HBOC)という疾患概念が提唱されています。HBOCは、BRCA1遺伝子またはBRCA2遺伝子の生殖細胞系列の先天性の病的変異が原因で乳がんや卵巣がんを高リスクで発症する遺伝性腫瘍の1つです。
女優のジョリーさんが受けた乳がん予防切除が、遺伝性乳がんのリスクが高い人を対象に日本国内でも始まるようです。癌研有明病院(江東区)、聖路加病院(中央区)が準備を始めています。
また乳房再建術でも、CAL組織拡大術(cell assisted lipotransfer)という新しい医療技術(高度美容外科医療)が開発されています。再建する乳房に注入する脂肪の中の幹細胞の密度を高めることにより、従来の脂肪注入術よりも、脂肪の生着率を高めることができます。この手術自体は、注射器で行うので傷も残らず柔らかい乳房が再建できるようです。
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