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血圧の左右差は危険か? (2/2)|診査と査定の現場から|牧野 安博

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血圧の左右差は危険か?

高血圧治療と降圧剤

   「高血圧治療ガイドライン2009(JSH2009) 」では、「高血圧治療の目的は、高血圧の持続によ ってもたらされる心臓と血管の障害に基づく心血管病の発症と、それらによる機能の障害 や死亡を抑制し、また、すでに心血管病を発症している場合にはその進展、再発を抑制し て死亡を減少させることである。」と高血圧治療の目的を定義しています。つまり治療の 目的は高い血圧を下げることにより心臓と血管を守ることです。

  高血圧治療は生活習慣の修正(第1段階)と降圧薬治療(第2段階)によって行われま す。高血圧の予防のためには、「すべての国民が生活習慣の修正をこころがける」(JSH2009) ことが必要でしょう。肥満により高血圧となった人は、食塩摂取量の制限、 減量、運動療法、アルコール摂取量の制限などにより、体重を減らすことだけで血圧値を 下げることができます。

 一般的には、高血圧治療のための降圧薬の服用は一生涯続くと考 えられています。したがって生命保険等に加入する際には、もし減量により血圧が下がり 降圧薬の服用を中止したのであれば、その理由や経緯を詳細に告知してください。そうで ないとお客さまが勝手に服薬治療を中断したと判断されてしまうことが多いです。また、 降圧薬を減量もしくは中止すると、通常6ヶ月以内に血圧が高血圧水準まで再上昇するこ とが多いともいわれています。

  さて、降圧薬治療の開始時期は、血圧水準、心臓血管系の危険因子の有無、高血圧に起 因する臓器障害の有無などを考慮して総合的に主治医が判断します。降圧薬の使用上の原 則は1日1回投与の薬物で、低用量から開始します。降圧薬投与開始後は、降圧目標を達 成できるように薬剤の種類や用量を加減していきますが、目標達成率は降圧薬服用者の半 分程度との報告があります。

 新契約の引受査定において、降圧薬の服薬治療開始から間も ないお客さまの生命保険を引受けないのは、血圧のコントロールが定常状態となっていな い可能性を危惧しているからです。降圧薬の服薬開始後1~2年経過して日常の血圧水準 が安定してから生命保険加入を申込むのが良いでしょう。

  高血圧患者の多くは薬物治療が必要です。高血圧に関する臨床試験のメタ解析による と、収縮期血圧10~20mmHg、拡張期血圧5~10mmHgの低下により相対リスクは 脳卒中で30~40%、虚血性心疾患で15~20%それぞれ減少することが明らかにさ れています。この事実からしても、降圧薬を服用して血圧水準をしっかりとコントロール している高血圧患者のお客さまの方が、治療をしていない人よりも死亡リスクが少ないの が明白でしょう。  

 現在、降圧薬として使用されている主な薬物は、カルシウム(Ca)拮抗薬、アンギオ テンシン変換酵素阻害薬(ACE)、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)、利尿薬、 β遮断薬の5剤です。高血圧治療の第一次選択薬の主流は、ARB、ACE阻害薬とCa拮抗薬 です。新契約の告知書を見ていると、高血圧治療中の告知をされるお客さまが服用してい る降圧薬のほとんどがこの3剤です。40歳代後半くらいから降圧薬の服薬を開始し、い ずれか1剤を毎朝1回服用して、最近の血圧水準(140/90mmHg未満)が安定的に コントロールされているのであれば、生命保険は無条件から軽度条件付で加入できるでし ょう。臓器障害(脳血管障害、心疾患、腎疾患、血管疾患)などがないことも重要です。 定期健康診断結果や人間ドック成績表などでこれを証明すると、医療保険も引受ける保険 会社もあります。

  保険会社の新契約査定者にとって、高血圧治療のための降圧薬剤名は有用な情報です。 可能な限り高血圧治療中のお客さまには、服薬している薬剤の名前と用量(mg)も告知書 に記入していただくようにしましょう。ARB(ブロプレス、ニューロタン、ディオバン)、 ACE阻害薬(タナトリル、レニベース、レリート)、Ca拮抗薬(アテレック、アムロジン、 ノルバスク、アダラート、バロテイン)などが、代表的な降圧薬剤名です。

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