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正しい「実質返戻率」と「税効果返戻率」|企業保険ワンポイントアドバイス|奥田雅也

企業保険ワンポイントアドバイス|奥田雅也

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正しい「実質返戻率」と「税効果返戻率」

法人保険の設計書に記載されている「実質返戻率(保険会社によっては税効果返戻率と表記)」について、従来より疑問を持っておりました。

全額損金計上が出来る保険商品ならまだしも、一部でも資産計上が発生する保険商品において設計書に表記されている「実質返戻率」は正しい効果を表しておらず、契約者に誤認される可能性が高く廃止すべきでは?と考えております。

私が副理事長をつとめておりますNPO法人全日本保険FP協会内で、いろいろな角度から議論をした結果、保険設計書に表記されている「実質返戻率」ではない「新しい実質返戻率」と「新しい税効果返戻率」を提唱したいと考えております。

ではその内容を実際の数字を使って解説をします。

○某生命
逓増定期 50歳男性
保険金額1億円
年払保険料:12,477,200円

9年目解約返戻金110,920,000円

返戻率:98.7%
実質返戻率:119.7%
※税率35%として

この逓増定期保険は、支払保険料の1/2を損金に計上する事ができます。従来の実質返戻率は以下の計算式によって算出されます。

解約返戻金-《支払保険料累計-(損金計上額累計×税率)》=実質返戻率

この計算式において問題になるのは、単に損金計上部分へ税率を掛けて軽減税額を算出している点です。資産計上部分については、税引後利益又は資金調達・資本取引等によって発生した流動資産にある現預金が前払保険料(保険積立金)として固定資産に移動しただけです。

この取引について、効果に含めて計算をするのは正しい効果を表しているとは言えません。そこで弊協会が推進する「新実質返戻率」は次の様に計算します。

1)年払保険料:12,477,200円
2)9年間累計保険料:112,294,800円
3)損金計上累計:56,147,400円
4)資産計上累計:56,147,400円
5)9年目解約返戻金:110,920,000円

5)−4)=54,772,600円・・・6)
※損金計上累計に対応する解約返戻金

6)÷3)=97.6%
※損金計上累計に対応する解約返戻率
→これを「新実質返戻率」と呼びます

3)×実効税率35%=19,651,590円・・・7)
※軽減税額

3)−7)=36,495,810円・・・8)
※税効果を加味した実質保険料

6)÷8)=150.0%
→これを「新税効果返戻率」と呼びます。


支払保険料のうち資産計上部分は、流動資産の現預金が固定資産の保険積立勘定に振り返っただけですので、解約返戻金から資産計上額を差し引きします。

そしてその差し引きした金額を損金累計保険料で割れば、損金に対応する返戻率が算出出来ます。ここまでは税率を考慮していませんから、法人所得や政策による実効税率の効果は全く受けません。

先ほどの例で申し上げれば、損金部分の返戻率が97.6%ですから「100%損金97.6%返戻」と同じ効果があると言えますので、巷を席巻している全損定期よりはるかに返戻率が良いことがご理解頂けると思います。

もちろん、保険料は資産計上部分も合わせて流出しますので、キャッシュフローへの影響は大きいです。

ですが、現預金に余裕がある法人には非常に活用出来る考え方ですし、一般的な法人や現預金に余裕がない法人の場合には、契約者貸付・保険証券担保融資を駆使すれば法人のキャッシュフローを痛めずに効果を出すことは十分可能です。

この考え方は、一部でも損金計上が出来れば効果測定が可能です。

例えば、長期平準定期保険の短期払いなどで単純返戻率を高めれば、キャッシュフローに注意をしなければいけませんが、大きな効果を出すことも可能です。


・解約返戻金から資産計上額を差引いて、損金計上額で割り戻したものを「実質返戻率」

・解約返戻金から損金計上額を差引いて、損金計上額から軽減税額を差し引いたもので割り戻したものを「税効果返戻率」



この考え方を保険業界において定着させたいと考えております。
 

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