2011年12月31日 06時10分更新
子どもがお腹が痛いと言ったら何を考えますか。特に右下腹部痛を訴えたら、急性虫垂炎や急性腸炎などを考えるでしょうか。小児の急性虫垂炎の鑑別疾患としては、急性腸炎、腸間膜リンパ節炎、シェーンライヒ・ヘノッホ紫斑病、メッケル憩室、水腎症、尿路結石、女児の卵巣腫瘍などの疾患があります。
新しい医療診断技術が開発されると、頻度が少なかった病名が頻繁に保険の告知書に現れるようになります。腸間膜リンパ節炎がその良い例でしょう。
近年開発された高周波ハーモニック装置(超音波検査)の登場により、正常虫垂とその周囲組織が明瞭に描出できるようになりました。この技術により手術が優先される急性虫垂炎と、保存治療が第一選択の腸間膜リンパ節炎、憩室炎、小腸炎などの急性腹症との鑑別が容易です。
すなわち緊急手術の要否を決める上で、この高周波ハーモニック装置による超音波検査は非常に有用です。というのも、こどもの開腹手術の是非を左右するのですから、親としては一大事ですよね。
腸間膜リンパ節炎は、主に回盲部付近の腸管膜リンパ節の非特異的炎症です。種々の感染症(腸管の感染症、風邪などの上気道感染症)などで起こり、発熱、腹痛、嘔吐、下痢などの急性虫垂炎に良く似た症状を呈します。
血液検査では、CRP高値、白血球増多、赤沈亢進(赤血球沈降速度)などの炎症反応も観察されます。それゆえ急性虫垂炎と判断され、手術を受けることが多いのですが、虫垂切除を目的として開腹手術をしてみると、実は虫垂は正常で腸間膜に発赤腫脹したリンパ節を認めることで腸間膜リンパ節炎と判明するのです。
臨床症状からでは、腸間膜リンパ節炎と急性虫垂炎との鑑別は困難です。腸間膜リンパ節炎の頻度は、虫垂炎手術例の10%と従来いわれてきましたが、高周波ハーモニック装置の導入により、今後の腸間膜リンパ節炎の症例数は増加すると思われます。腸間膜リンパ節炎の確定診断とされるリンパ節のサイズと数は「5mm以上3個以上」とされています。
お腹が痛いのだから消化器疾患と思われますが、腸間膜リンパ節炎はリンパ節の炎症ですから循環器疾患に分類されます。腸間膜リンパ節炎は保存的治療で軽快します。したがって、完治後は標準体で保険加入が可能な疾患です。
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