『本気』｜イーカルボナリコラム｜人見 輝也

『本気』

 「本気」　　　　　　　　　後藤静香

　　　 本気ですれば

　　　 たいていな事ができる

　　　 本気ですれば

　　　 なんでも面白い

　　　 本気でしていると

　　　 だれかが助けてくれる

　　　 人間を幸福にするためにも

　　　 本気で働いているものは

　　　 みんな幸福で

　　　 みんな偉い


 本気になれば、その気になれば意外とできてしまうことがあるのではないか。

 数年間ほったらかしてあった食器棚の扉が、とうとう外れそうになってきた。
 いわゆる蝶番(ちょうつがい)が経年疲労で断裂してしまったのだろう。
 一度数年前に職人さんに直してもらったのだが、一箇所の修理で結構の額を
 請求された覚えが有るので、次回は自分で修理しようと決意したのは良いが、
 そのままにして数年間経ってしまった。
 結果、故障箇所は六ヶ所に増えた。
 手を付けなかった一番の言い訳は、蝶番の部品メーカーの名前がわからず、
 従って取り寄せられない、ということだった。
 何回も蝶番を覗いてみたが、名の知れた家具メーカーなのに、部品メーカー
 の名前も製品番号も見当たらない。
 いよいよ、女房殿のイライラの風当たりも強く、限界に来ているようなので、
 恐怖のあまりもう一度、腰を上げて食器棚に無理やり頭を突っ込んで、
 部品に顔を近づけてみた。
 な、なんとメーカー名が今度は見えた。読み取れたのである。

 何が今までと違ったのか？

 切羽詰って「本気」で取り組んだのだ。
 今までは、裸眼で見ていたのだが、今回はメガネをかけ、その上「虫眼鏡」を
 用意し、「懐中電灯」で照らしもした。照射の角度もいろいろ工夫してみた。

 結果は裏切らなかった。

 ネットで部品を取り寄せ、なんと、コストは部品代だけの六千円余りで済んだ。
 本気になれば見えないものも見えてくる。できないものも出来てくる。
 ささいな経験だったが、貴重な経験だった。

 ついでに、本気で「スプーン曲げ」に挑戦した。

 これも、難なく成功してしまった。

 但し、これは女房の新たなる怒りを買ってしまった。
 「本気」で怒られた。

 本気パワーは恐ろしい（笑）