2017年10月12日 18時11分更新
10月に入って、保険業界には「買収」ニュースが立て続けに流れました。
まずは東京海上ホールディングスが、海外子会社の米HCCインシュアランスHDを通じて米保険大手AIGの医療・傷害保険事業を300億円強で買収したと報道されました。東京海上が買収するのは、従業員向けの医療保険を自家保険で運営している企業や団体に対して、支払い上限額を超えた場合に補償するメディカル・ストップロス保険と呼ばれる事業で、米HCCがこの分野を得意としていて、買収によって更に拡大させることが目的と報道されていました。
続いて、日本生命保険によるマスミューチュアル生命保険買収ニュースが流れました。買収額は1000億円から2000億円で、銀行窓口での保険販売が専門のマスミューチュアルを傘下に収めることで、第一生命ホールディングスの後塵を拝してきた銀行窓販部門を強化すると報道されていました。
久しぶりの日本社による外資生保社大型買収で、業界もかなり動揺した感がありますね。
更に、MS&ADインシュアランスグループホールディングスが、スイス再保険傘下の英生命保険リアシュア・ジャージャー・ワンに1200億円出資し、同社株式の15%を取得すると報道されました。アジアに軸足を置く海外展開を多角化し、収益源を厚くする為、欧州での初の大型買収だと報道されていました。
10月に入って僅か一週間で相次ぐ「買収」報道を見ると「保険業界も荒れているな」と実感できますね。この展開を日本経済新聞では、次のように分析しています。
「日本の生保市場は周辺のアジア各国に比べると成長が頭打ちで、マイナス金利政策による逆風も強い。欧米大手は経営の健全化を示す自己資本比率を高めるため、自国外でのビジネスを縮小する傾向にある。日本事業が中途半端な大きさにとどまっているケースでは今後も撤退候補とみなされる可能性がある。半面、国内大手は収益率の低下を規模の拡大で補う動きを強めそう。日生の積極姿勢に触発され、他の大手組が対抗策に出るのは確実だ。」
にすき
9月1日より、香港のFWDグループに入ったFWD富士生命保険も社名を改め再スタートし積極的な展開をしていると聞いています。買収が新しい動きの切っ掛けになれば良いのですが、何となく現状は「陣取り合戦」の体に過ぎません。
「顧客不在」のこうした展開は、「顧客離れ」となって、保険業界そのものが末期的危機に陥ると警告を発し続けて来ましたが、事態は悪化する一方です。
札束で市場を買うというのではなく、せめて「顧客に活きる」買収をやらないといけないと切実に思います。