2017年04月03日 17時51分更新
政府は特定企業に属さずに働くフリーランスを支援するため、失業や出産の際に所得補償を受け取れる団体保険の創設を提言すると報道されました。
損害保険大手と商品を設計し、来年度から民間で発売してもらうとされていますが、保険は「事故性」が求められる商品です。損保の傷害保険の保険金支払いのための三要素として定義されている「急激・偶然・外来」が特徴的だと考えますが、今回の「失業」が事故にあたるのか極めて疑問です。
保険を活用して業界を支援するという事では、自動車保険などは顕著な事例だと思います。こんなにモータリゼーションになった背景には、自動車事故による保険金支払いを耐えつつ自動車業界を支えた保険会社の存在を抜きには考えられません。自動車保険については国が自動車賠償責任法という法律を作り、車検の際に「自賠責保険」加入を強制加入とし、保険会社を窓口に保険料徴収させています。一時は「走る凶器」とも言われ事故も多発していた自動車ですが、技術の進化、インフラの整備等もあり、大幅に事故は減り、今では損保業界の屋台骨を支えるほどに自動車保険は進展しました。
地震保険も国が再保険を担っていますので、今回の保険も入口は保険会社に作らせて国が再保険を受けるつもりなのでしょうか。
そういった意味では、非常に関心を持っています。
因みに、「フリーランス」は、複数の企業と特定業務で契約したり、個人事業主として働いたりする働き手を指します。IT(情報技術)の進化で米国などでは急増しており、日本でもシステム開発やウェブサイトの制作を手掛けるデザイナーや技術者、翻訳家、ライターなどフリーで働く人が増えており、しかも女性の活躍も目立つそうです。
しかし、日本では企業の正社員として働いていない人については、社会保障制度が手薄な面があり、しかも契約が満了を迎えると収入が途絶えるといったリスクも大きいため、政府はフリーで働く人への支援を手厚くする施策の柱の一つとして、この所得補償保険の創設を提言しているのです。
今年発足した業界団体「フリーランス協会」に加入すれば、保険料が最大5割軽減される「団体割引」の仕組みとするよう損保会社に指示するようですね。
なかなか踏み入った指示を出してまで、特定業態を支援するという形態はなかなか稀だと思います。
米国ではフリーランスが労働力人口の35%にあたる5500万人規模に達しており、日本でもクラウドソーシング大手社の推計によると、副業も含めた広義のフリーランス人口は1064万人に膨らんでいるそうです。
「失業をどう事故性に絡ませるのか」、「久しぶりに国による保険開発指導」と非常に面白い話なので今後も注視していきたいと思いますね。
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