2013年03月23日 11時25分更新
平成24年1月13日に出された
逆ハーフタックスプランに関する
最高裁判決は、
非常に意味深い内容となっています。
保険業界に関係している方なら
確実に押さえておくべき内容です。
2)施行令・通達を否定している
最高裁判決文をそのまま引用します。
本件のような類型の養老保険の
保険金支払に係る課税について、
若干の混乱が生じたことには
所得税法施行令183条2項2号や
所得税基本通達 34-4の規定振りが、
いささか分かりにくい面もあることが
一因をなしているよ うにも思われる。
しかしながら、このうち同施行令同号の意義は、
法廷意見で述べるとおりである。
【省略】
もとより、法規より下位規範たる
政令が法規の解釈を決定付けるものではないし、
いわんや一般に通達は
法規の解釈を法的に拘束するものではないが、
同通達は上記のような趣旨に 理解されるものであって、
要するに、同施行令同号も同通達も
いずれも所得税法34条2項と整合的に解されるべきであるし
またそのように解し得るものである。
ここで言われているのは
「法律が大前提にあって、政令や通達が
法律解釈を変えてはならない」という事です。
もう少し具体的に解説をします。
まずは所得税法34条2項を確認しておきます
■所得税法34条2項
(一時所得)
一時所得の金額は、その年中の一時所得に係る総収入金額からその収入を得るために支出した金額(その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る。)の合計額を控除し、その残額から一時所得の特別控除額を控除した金額とする。
所得税法34条2項では、
一時所得の計算をする場合には、
総収入金額から差引く事が出来るのは
その収入を得る為に支出したものと
特別控除(50万円)だと規定しています。
ところが、所得税施行令183条2項2号は
少しニュアンスが変わって来ます。
■所得税施行令183条2項2号
(生命保険契約等に基づく年金に係る雑所得の金額の計算上控除する保険料等)
当該生命保険契約等に係る保険料又は掛金の総額は、その年分の一時所得の金額の計算上、支出した金額に算入する。
ここでは「掛金の総額は支出した金額に算入する」
と言い切っています。
さらに極めつけが所得税基本通達 34-4です。
■所得税基本通達 34-4 (生命保険契約等に基づく一時金又は損害保険契約等に基づく満期返戻金等に係る所得金額の計算上控除する保険料等)
令第183条第2項第2号又は第184条第2項第2号に規定する保険料又は掛金の総額には、その一時金の支払を受ける者以外の者が負担した保険料又は掛金の額も含まれる
※筆者注 平成24年に修正されましたので、上記通達は当時のものです。
今回の裁判において、原告側は
所得税施行令と所得税基本通達を拠り所にして
逆ハーフタックスプランにおいて、
個人が受取る満期保険金に関する一時所得について
満期保険金受取人が負担している1/2相当額だけでなく
法人で損金計上した1/2相当額も控除出来ると主張しました。
実際に、地裁・高裁の判断は
所得税施行令と所得税基本通達に則って
原告側勝訴の判決を言い渡していました。
ところが、最高裁判所の判決では
地裁・高裁の判断を覆し、
さらに施行令と通達をも覆してしまったのです。
保険税務においては「通達」を
拠り所にして判断されるケースが多いですが、
通達よりも法律に立ち返って判断しないと
司法の最高権威である最高裁は言っている点は、
非常に意味深いものであると言えます。
詳しくはコチラにて解説をしております
利益繰延でなく課税されないヒミツの生命保険活用法~最終章~
もしくはコチラもご参照下さい