2014年02月24日 04時21分更新
最近、人口に膾炙するサルコペニア肥満症についてお話しましょう。サルコペニア肥満(sarcopenic obesity)とは、筋肉量の減少をともなった肥満症で、中高年以降に発症します。サルコペニアは、加齢による筋肉量の減少を意味する用語として提唱されました。サルコ(sarco)とぺニア(penic)はそれぞれ筋肉と減少の意味になります。つまり高齢者における加齢性筋肉減弱現象です。骨格筋の筋肉量は、20歳代をピークに、40歳代以降は年1パーセントの割合で減少していきます。現在では、サルコペニア肥満は、身体機能障害、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)低下、死のリスクを伴う包括的な疾患概念とされています。また脂肪量は60歳代がピークとなります。
少子高齢化の進行する日本において、サルコペニア肥満となる高齢者の人数も増加する傾向にあります。OECDの報告によると、65歳以上の日本人高齢者の割合は、2030年と2050年にはそれぞれ30%と40%弱になると推計されています。また85歳以上の割合は2050年で10.2%と推計されています。高齢者人口の増加に比例して、サルコペニア肥満も増加すると考えられます。 サルコペニア肥満には、筋肉量の減少による転倒・骨折から寝たきりとなるリスクと、肥満による糖尿病、脳血管疾患、冠動脈疾患などの生活習慣病発症リスクがあります。特に肥満つまり脂肪量の増加は、末梢組織のインスリン抵抗性を高めます。
筋肉特に骨格筋は、脊髄の前角に細胞体がある運動神経(下位運動ニューロン)により刺激を受けています。1本の運動神経が支配する筋線維(筋細胞)の数はさまざまです。これを運動単位とよびます。筋肉はこの運動神経からの電気刺激を受けないと痩せ衰えて力を出すことができなくなります。それゆえにスポーツ選手は、筋力を維持するために日常のトレーニングを休むことができないのです。また野球などのプロスポーツ選手が現役を引退すると瞬く間に筋肉が萎縮し脂肪が増加して来ます。元々運動をしていない人よりも肥満体型になりやすいです。
加齢による筋力低下は、筋線維数の減少、筋横断面積の減少、速筋線維(typeⅡ)の萎縮によって起こります。一般に遅筋線維(typeⅠ)よりも速筋線維の方が萎縮しやすい傾向にあります。魚でたとえると、鮪よりも鯛の方が筋力低下を起こしやすいということです。また上半身と下半身の加齢による筋肉量の変化を比べると、下半身の方が上半身よりも約3倍速く衰えます。 サルコペニアの結果、転倒、尿失禁や精神錯乱などを起こしやすくなります。これらはサルコペニアによる老齢化症候群の一部の症状にすぎません。
肥満は数多くの疾患とその合併症に関与し、独立した心血管危険因子と考えられています。肥満は、身体障害と認知障害のリスク増加にも関係します。平均余命も減少します。先進国での60歳以上の高齢者肥満人口の割合は、一般母集団の30%を超えています。 サルコペニア肥満の治療は、筋肉トレーニングに尽きます。特に、筋力の衰えやすい下半身について筋トレをするのが良いです。下半身の筋肉に対しては、スクワット、もも上げ、つま先立ちなどの運動を行うと良いです。スクワットは、人体3大筋肉の1つである大腿四頭筋を鍛えることができます。ある医療機関における横断研究では、サルコペニアは、加齢や骨密度とならぶ股関節骨折の危険因子であることが報告されています。
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