2013年11月20日 05時32分更新
人間ドックなどで腹部超音波検査を受けますが、一番大きな充実臓器の肝臓もこの検査で調べることができます。この肝臓全体が超音波で光輝くときは注意が必要です。というのも肝機能検査値異常の原因となる脂肪肝があるからです。患者数400万にとも言われるNASHも含め、以下に紹介しましょう。
疾患概念・原因
脂肪肝とは、肝細胞中に脂肪(中性脂肪)が過剰に沈着した状態です。病理学的には、すべての肝小葉の3分の1以上の領域にわたって著明な脂肪滴の蓄積性変化が肝細胞に見られますが、形態学的な異常は認められないのがふつうです。食生活の欧米化からの過栄養により脂肪肝の頻度が増加しています。また大量飲酒家の80%以上に脂肪肝が認められます。その他、脂肪肝の成因とかんがえられているものには、肥満、糖質の過剰摂取、糖尿病、甲状腺機能亢進症、クッシングng症候群、ライ症候群、副腎ステロイド、テトラサイクリン系抗生物質、妊娠、栄養不良状態があります。
疫学・症状・経過
脂肪肝の原因の多くは過度の飲酒と過食です。過度の飲酒によるアルコール性脂肪肝は放置されると肝炎や肝硬変に進行することもあります。一方、最近では過食によるものが増えており、メタボリック・シンドローム(肥満、高血圧症、内臓脂肪蓄積などが重なりあった状態)も伴って、脂肪肝(非アルコール性脂肪肝)が見られるケースが増加しています。
脂肪肝には特徴的な自覚症状はないため、健康診断で発見されることが殆どです。初期には自覚症状はなくても、長期間のうちに進行した場合には「疲れやすい、食欲がない、体がだるい」といった症状が出現してきます。
脂肪肝の多くは、禁減酒や体重減量、食事内容の見直しなどによって改善が望める状態ですが、最近注目されているものに、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)があります。これは、飲酒が原因ではない脂肪肝(過食などによる脂肪肝)の中に、数年のうちに肝細胞の壊死や炎症などを生じるもので、中には肝硬変や肝癌に至ることもあります。メタボリック・シンドロームの増加が懸念されている現在、肝障害の中でこのNASHの割合はますます高くなるだろうと予想されています。また、日本人は「節約遺伝子」と呼ばれる、脂肪を蓄積しやすい遺伝子を持っているとされており(肥満になりやすい)、脂肪肝や派生する疾患には注意が必要です。
検査・診断
腹部超音波検査を行うと、肝臓と腎臓や肝臓と脾臓のコントラストが増大し、肝臓全体が白くきらきらと輝いて(bright liver)見えます。深部超音波の減衰と肝内血管が不明瞭となります。血液検査でGPT優位にトランスアミナーゼが軽度上昇します。ChEと中性脂肪の上昇も観察されます。なお、アルコール性脂肪肝ではGOT優位の上昇となります。これらの所見に加えて、HBVとHCVなどの肝炎ウイルスマーカーが陰性のとき脂肪肝を疑います。確定診断は肝生検によります。
治療・予後
可逆性のある脂肪肝の治療は、減量と運動です。 一般的に経過は良好で、がん発生率は極めて低いと考えられています。動脈硬化に基づく心臓、脳、腎臓などの血管性病変の合併がみられることがあります。妊娠性やライ症候群による脂肪肝は、DIC、腎不全などを合併し予後が悪いです。
告知のポイント
腹部超音波検査で脂肪肝を指摘されたときは、脂肪肝の告知に加えて肝機能検査数値も一緒に告知すると良いでしょう。美点考慮してくれる生命保険会社も多いです。
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