2012年03月30日 18時09分更新
昨年の秋口から本年1月にかけて、わが国の国債が債務不履行(デフォルト)、あるいは国債が暴落するのではないかと週刊誌などが騒ぎ立てました。
足下、債務不履行や国債暴落論は一時期より沈静化していますが、それでも書店やネットには有象無象の暴落論等があふれています。
筆者のところにも数誌から取材がありましたが、一貫して日本国債が数年内にデフォルトすることはないと言い続けました。
予断ですが、週刊誌などの編集部では、特集記事は「国債のデフォルト」で行こうと決まったら、国債のデフォルトについて語ってくれる専門家等を捜し出し誌面を作る体裁になっています。
つまり、編集部の方針に合致しないと掲載されないということになるのです。
中には、反対意見と対比させた誌面構成になることもありますが・・・。
週刊誌の中吊り広告などに決して過剰に反応しないようにしてくたざい。
では、なぜ筆者が国債が数年内、正確には10年程度はデフォルトしないと考えているのかといえば、財務省が公表しているデータ、あるいは報道されるデータに恣意性があると思われてならないからです。
やや古い出来事になりますが、昨年9月、五十嵐財務副大臣の発言の要旨を述べます。「わが国の債務残高は1000兆円にも及ぶ。
個人の金融資産は1400兆円あるが、負債も350兆円あるので正味の資産は1050兆円。債務残高と個人の正味資産の差は50兆円しかない。早晩、個人の正味資産を国の債務残高が越えてしまう危険水域に達してしまう」と述べました。
この発言はさまざまなマスコミが報道したため、覚えいる人もたくさんいることでしょう。
この発言、ちょっと会計学の知識がある人にはすぐ詭弁とわかるはずです。
国の債務残高=1000兆円はグロスの数字、個人の正味資産=1050兆円は、資産マイナス負債のネットの数字だからです。わが国の財務状況を表すネットの数字は?と問われれば、財務省は毎年6月に「国の財務書類」というものを公表しています。昨年6月に平成21年度のものが公表されました。
図版は平成21年度末(平成22年3月末)の国の貸借対照表です。これを見ておわかりの通り、国は資産を647兆円保有しているのです。先の五十嵐副大臣が述べた1000兆円から647兆円を差し引けば、353兆円が債務超過額ということになります。もちろん、資産の部には運用寄託金(=公的年金)、有形固定資産の一部、たとえば国の施設や道路、治水など売却できない資産もあると反論もあるでしょうが、正味の債務超過額は報道等で知らされる1000兆円の半分に満たないと考えてもよいのではないでしょうか。その債務超過額を個人の正味資産で賄うと考えれば、まだまだわが国の債務残高は危険水域とは言えないのです。
だからとって、放漫財政を筆者も許すことはできませんが、国債(国家)破綻の報道に一喜一憂しないように、右から左に流してもらって構いません。
その他の角度からも破綻しない理由はありますが、それは次回に述べることにしましょう。ただし、注目すべき材料(出来事)などがあった場合は、そちらを優勢させていただくことをご承知おきください。