2015年01月19日 10時55分更新
毎年この頃になると思うことがある。
なぜ、営業職になったのか?
ひとつ思い浮かぶことは、毎年1月15日に開催される東京世田谷のボロ市
のことだ。
江戸時代から世田谷に続く伝統行事で、全長2キロ余りの露天市である。
子供の頃から楽しみにして、もう60年以上通っていることになる。
昭和の半ば、私たちにとってエキシビションのようなものであった。
様々な刺激、情報との遭遇がそこにはあった。
ボロ市を半日かけて一周すると、なんか一回り大人になったような気になる。
そんな場所、時間であった。
そこで最も私に影響を与えたのが、香具師(やし)達であった。
フーテンの寅さんを思い浮かべて頂ければ、想像が付くかもしれない。
彼らは様々な姿で様々な品物の販売に携わっていた。
バナナの叩き売り、ガマの油売り、瀬戸物売り、包丁売り、七味唐辛子売り、
耳かき売り、怪しげな万年筆売り。
彼らは啖呵売(たんかばい)と言われるスタイルでそれぞれの世界を構築
していた。
ひとつひとつ彼らが立つ路上がステージだった。
その衣装、振る舞い、口上(こうじょう)は私を釘付けにした。
包丁売りは堺から来ていたが、私が初めて生で耳にする関西訛りであった。
彼はなんと、傍らの木の角材を目の前で包丁で切り刻んでしまうのだ。
「大根ザクザク、人参ザクザク」と唄いながら、リズムを取りながら。
七味唐辛子屋さんはトンガラシのような真っ赤な三角帽をかぶり、装束も
真っ赤で、これも七種類の材料の効能を唄に載せ説明し、調合していく。
ガマの油売りは蛇をかざすことによって、お客との最適な間隔を確保する事を
ご存知だろうか。近すぎず、遠すぎず…
いずれも、親方・先輩から厳しく仕込まれた節回し、セリフ、リズムであろう。
人の耳に心地よく、わかりやすく伝わりやすい。
長年にわたって練り上げられ完成された、日本人独特の感性に訴える構成に
なっている。
はじめのテーマに戻る。なぜ営業職になったのか。
人を楽しませながら効能を伝え、商品が飛ぶように売れる。
こんな香具師に憧れを持ったのも一因だろう。
立った場所がステージ、つまりお店になり、パフォーマンスの善し悪しで
売上が決まる。
セールスマン像につながる。
昨日、ボロ市に行ってきた。
香具師の姿はどこにも見つけられなかった。
日本人の心理を鷲掴みにする伝統的セールスマンたちは絶滅してしまった。
最近、セミナーセールスの講師を目指す人が増えている。
知識をただ喋るだけでは、セミナーになってもセールスにはならない。
その時に是非、日本の伝統話芸の表現者「香具師」に思いを馳せながら、
伝える技術、表現や構成を磨いていただきたい。
きっと、聴く人の心をもっと掴めるだろう。
唄うように、リズミカルに…
家に帰り近年の香具師を偶然テレビで見た。
「ジャパネットたかた社長」の引退会見だった。
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