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【イベントレポート】JAXA 宇宙戦略基金事業部×CONSEO合同イベントが初開催--金融や保険、コンサル分野まで広がる衛星データ活用|保険ニュース

【イベントレポート】JAXA 宇宙戦略基金事業部×CONSEO合同イベントが初開催--金融や保険、コンサル分野まで広がる衛星データ活用


 国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙戦略基金事業部と衛星地球観測コンソーシアム(CONSEO)は、8月3日に初の合同イベント「産官学金による衛星データ利用エコシステムの共創」を開催しました。同日実施されたパネルディスカッションの模様をお伝えします。
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パネルディスカッション「産官学金による衛星データ利用エコシステムの共創」

 パネリストとして、宇宙戦略基金事業に採択された実施機関でもある、国際航業の新井邦彦氏、東京海上ホールディングス(実施機関は東京海上レジリエンス)の藤木潤一郎氏、デロイト トーマツ スペース アンド セキュリティの栃木佑太氏の3名が登壇。衛星データの社会実装を加速させるために必要な産業連携や金融機関の役割、海外市場への展開などについて語りました。モデレーターは、三菱UFJ銀行の橋詰卓実氏が務めました。
衛星データは「DXを実現する重要ツール」
 冒頭、三菱UFJ銀行の橋詰氏は、衛星やロケットなどを開発・製造する“アップストリーム”では企業同士の部分提携が中心であるのに対し、ユーザーとして衛星データを活用する“ダウンストリーム”ではM&A(買収・合併)が起きはじめていると指摘。衛星データは金融機関も主要ユーザーになり得ると語り、「DXを実現するための重要なデジタルツールとして捉えるべき」と強調しました。
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三菱UFJ銀行 産業リサーチ&プロデュース部 宇宙イノベーション室長の橋詰卓実氏

 三菱UFJ銀行でも衛星データを不動産担保評価に活用することを検討している事例を紹介しつつ、金融機関は今後、資金供給だけではなく自らも衛星データを活用し、さらには利用企業と技術企業を結び付けるハブとしての役割を担うようになるべきだと持論を展開しました。
「保険×衛星データ」で事前から事後(復旧・復興)までフェーズフリーに支援
 金融領域における衛星データの利活用事例の1つとして、東京海上ホールディングス(東京海上HD)の取り組みが紹介されました。藤木氏によれば現在、東京海上グループの収益の約7割は海外事業が占めており、今後は保険に続く成長分野としてソリューション事業を育てていく方針です。

 その中でも、防災・レジリエンス分野は保険との親和性が高く、衛星データが積極的に活用されている領域の1つです。「私たちが衛星データに取り組み始めたきっかけは、保険金支払い業務の高度化でした」と藤木氏は振り返りました。
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東京海上ホールディングス ソリューション事業部 レジリエンス事業開発G マネージャーの藤木潤一郎氏

 大規模災害が発生した際、被害状況を迅速に把握することは容易ではありません。しかし、衛星データを活用することで、被災範囲を短時間で把握できるようになり、保険金支払いの迅速化につながっています。さらに現在では、災害後だけでなく災害前のリスク評価にも衛星データを活用しています。「これまで見えなかったリスクが可視化できれば、新しい保険商品も生み出せます」(藤木氏)

 同社は宇宙戦略基金事業において、「保険と衛星ソリューションの一体提供モデル構築による防災基盤強化」に取り組んでいます。衛星情報サービスを展開するグループ企業の日本工営との連携により、平時のインフラモニタリングや災害前のリスク評価・予防、発災時の被害把握、災害後の復旧・復興支援まで、事前から事後までフェーズフリーで一体的に提供するサービスの構築を進めています。「保険金を支払って終わりではなく、どう復旧し、将来の災害に強いインフラへ作り替えるかまで支援することが重要です」と話しました。
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東京海上グループが宇宙戦略基金事業を通じて目指す姿

海外展開に欠かせない「2つの視点」
 東京海上HDはグループですでに海外の売上比率が高い企業ですが、これから海外展開を目指す企業はどうするべきか。宇宙ビジネスや安全保障領域に関するコンサルティングを展開するデロイト トーマツ スペース アンド セキュリティ(DTSS)の栃木氏は、海外展開には大きく2つの視点が求められると話します。

 それは「相手国の政策を理解すること」と「産業構造を理解すること」。各国の宇宙政策は、それぞれの国が抱える社会課題や産業ニーズを反映していることから、衛星データでどのような課題を解決したいと考えているのかを把握することが、市場参入の第一歩になると述べました。
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デロイト トーマツ スペース アンド セキュリティ 宇宙領域 シニアマネジャーの栃木佑太氏

 さらに、現地の産業・ビジネス構造を理解することも欠かせないといいます。衛星データの利活用は宇宙産業内で完結するものではなく、例えばオーストラリアでは、農業、鉱業、金融・保険、防災関連産業など、州政府ごとに形成された非宇宙産業クラスターの中で広がっています。そのため、日本企業が現地市場へ進出する際には、宇宙業界だけではなく、衛星データを活用するユーザー企業や自治体、産業団体まで含めたエコシステム全体を理解する必要があると説明しました。

 DTSSは宇宙戦略基金事業である「日豪・太平洋島嶼国における衛星事業プラットフォームの構築・推進」に取り組んでおり、上記のような背景から、オーストラリアや太平洋島嶼国を対象に、日本企業と現地政府、企業、研究機関・アカデミア等との橋渡し役を担うことを目指しています。
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デロイト トーマツ スペース アンド セキュリティが宇宙戦略基金事業で取り組む「日豪・太平洋島嶼国における衛星事業プラットフォームの構築・推進」

AI時代にむしろ価値が高まる「現地データ」
 約50年にわたりリモートセンシング事業を展開している国際航業は、宇宙戦略基金事業でも2件のプロジェクトに採択されています。その1つの取り組みが、AIを活用して地盤変動解析基盤を構築する「Agentic AIによるInSAR変動マップの変動要因解釈基盤構築」です。
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国際航業が宇宙戦略基金事業で取り組む「Agentic AIによるInSAR変動マップの変動要因解釈基盤構築」

 衛星画像から地盤変動を検出する技術は実用化されていますが、それだけでは「なぜ地盤が変動したのか」という原因までは分かりません。そのため、国際航業が保有しているコンサルティング技術である地形や地質、気象情報、現地測量データなどのデータを集合知として統合するAgentic AIによって変動要因まで解析できる仕組みを構築していきます。

 新井氏が強調したのが「グラウンドトゥルース(現地データ)がなければ、本当の意味での衛星解析はできない」ということ。たとえば森林解析では、現地で樹木の直径や樹高を測定し、そのデータと衛星画像を照合(キャリブレーション)することで初めて、高精度な森林解析が可能になると言います。「最近はAIで何でもできるような印象を持たれがちですが、それだけでは課題は解決できません。現場を理解し、現地データと衛星データを組み合わせて初めて価値が生まれます」(新井氏)
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国際航業 事業統括本部RSソリューション部 技術企画担当部長の新井邦彦氏

この点は日本企業の強みでもあると話し、「日本人は非常に真面目に現地データを取得し、衛星データとの整合性を丁寧に確認します。この品質の高さは海外でも評価されています」と説明しました。
M&Aの際に重視すること--各社には共通点も
 パネルディスカッションでは、M&Aによる競争力の強化にも議論が及びました。東京海上HDは建設コンサルティング業界最大手の日本工営を傘下に抱えるID&Eホールディングスを2025年にM&Aしています。デロイト トーマツ グループは2026年に、衛星リモートセンシングなどを活用したカーボンクレジットの信頼性評価を手掛けるサステナクラフト社をグループ傘下に迎え入れています。

 東京海上HDの藤木氏は、M&Aを実施する際に重視する3つの観点として、「カルチャーフィット」「高い収益性」「強固なビジネスモデル」を挙げました。日本工営との統合についても、これら3つの条件を高いレベルで満たしていたことが大きな決め手になったといいます。M&A以前から日本工営とは防災コンソーシアムなどを通じて連携しており、お互いの強みや事業シナジーを十分理解した上で統合へ進んだと明かしました。

 また、「衛星データだけで事業を考えるのではなく、防災やインフラ維持管理など、より大きな市場へどう接続していくかが重要です」と語ります。衛星データはあくまで課題解決のためのツールであり、その先にある復旧・復興やインフラ整備、レジリエンス向上まで含めてサービスを設計することで、より大きな社会実装につながるとの考えを示しました。
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東京海上HDの海外事業成長・M&Aの軌跡

 DTSSの栃木氏は、サステナクラフト社のデロイト トーマツ グループの参画について「衛星解析技術そのものを獲得することだけが目的ではない」と説明しました。デロイト トーマツ グループでは、カーボンニュートラルやネイチャーポジティブへの対応、ESG・サステナビリティ経営の推進をはじめ、多様なコンサルティングサービスを展開しています。そこに、客観性・透明性・信頼性の高い衛星データを解析、活用するエンジニアリング技術を融合することで、戦略立案等の上流のコンサルティングだけではなく、実装や運用フェーズまで一貫して伴走支援できる体制を強化したといいます。

 「既存事業とのシナジーを最大化できることが、グループジョインの最大の価値でした」と語り、衛星データを単独事業として捉えるのではなく、既存ビジネスを強化・補完し、その価値をさらに高めるレバレッジとして位置付けていることを強調しました。

 両社に共通していたのは、「宇宙事業への参入」を目的としたM&Aではなく、既存事業の競争力を高めるための手段として衛星データを活用していること。重要なのは衛星データそのものの提供ではなく、それを既存サービスや新たな価値創出にどのように組み込み、社会実装していくかという視点です。本セッションでは、衛星データ市場のさらなる拡大に向けた可能性や、新たなビジネス創出のヒントを得る機会となりました。

 なお、本イベントでは、宇宙戦略基金 第二期 技術開発テーマ「衛星データ利用システム実装加速化事業」の追加公募についての説明や、衛星データ関連の宇宙戦略基金事業実施機関8社によるピッチなども実施されました。詳細はぜひアーカイブ動画をご視聴ください。

                      執筆:藤井 涼(JAXA宇宙戦略基金事業部 広報担当)

プレスリリース提供:PR TIMES

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