スペシャリスト・ドクターズ株式会社(東京都港区)が運営するライフプランメディア「IKIGAI TOWN」編集部は、最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況(令和7年1月~12月)」(2026年3月公表)と厚生労働省「令和6年簡易生命表」、東京家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」を突き合わせ、認知症で凍結された親の口座を動かすために成年後見を始めた場合に、亡くなるまでに支払う報酬の総額を再計算しました。
申立ての動機は93.4%が「預貯金等の管理・解約」。しかし現行制度は原則として本人が亡くなるまで続くため、80歳女性で開始すると平均11.83年、基本報酬だけで総額283.9万円になります。預金500万円の家庭では、その56.8%にあたります。
▼全92通りの試算データ・図版3点(CC BY 4.0・改変可)はこちら
https://ikigai.town/ja/press/2026-08-10/ ■ 成年後見は「口座を動かすための制度」になっている
令和7年の終局事件42,674件について、主な申立ての動機(複数回答)は次のとおりです。
預貯金等の管理・解約 39,871件(93.4%)
身上保護 31,655件(74.2%)
介護保険契約 19,502件(45.7%)
不動産の処分 15,502件(36.3%)
相続手続 10,909件(25.6%)
開始原因は認知症が61.3%で最多。制度は本人の権利を守るために設計されていますが、実際の入口はほぼ「口座が動かせなくなったこと」です。
■ 始めると、原則として亡くなるまで続く
本人の年齢は、女性の63.1%、男性の34.5%が80歳以上。80歳の平均余命は女性11.83年、男性8.96年(厚生労働省 令和6年簡易生命表)で、現行制度ではこれがそのまま利用年数になります。
東京家庭裁判所の報酬めやすは、管理財産1,000万円以下で基本報酬 月2万円。80歳女性が開始した場合、月2万円 × 12か月 × 11.83年 = 283.9万円となります。成年後見人等に親族以外が選任されたのは83.6%で、専門職が選任されると報酬が毎年発生します。
■ 財産が少ない家庭ほど、負担率は高くなる
基本報酬が定額であるため、守る財産が小さいほど負担率が上がります。
管理財産 月額 総額(11.83年) 財産に占める割合
300万円 2.0万円 283.9万円 94.6%
500万円 2.0万円 283.9万円 56.8%
1,000万円 2.0万円 283.9万円 28.4%
1,100万円 3.5万円 496.9万円 45.2%
2,000万円 3.5万円 496.9万円 24.8%
6,000万円 5.5万円 780.8万円 13.0%
1,000万円と1,100万円の差は預金では100万円ですが、報酬総額の差は213万円です。基本報酬が管理財産1,000万円を境に月2万円から3~4万円の帯へ移るため、境目をわずかに超えるだけで月額が1.75倍になります。
■ 生命保険と並べると、性質の違いがはっきりする
生命保険文化センターの全国実態調査によれば、2人以上世帯の年間払込保険料は平均35.3万円=月2.94万円。成年後見の基本報酬 月2万円は、その68%にあたります。
ただし、役割は同じではありません。
生命保険 成年後見
毎月出ていく額 約2.94万円 2万円
お金の向き 給付として戻る 戻らない(預金を動かす手数料)
金額を決めるのは 自分 家庭裁判所
相手 会社・商品を選べる 家裁が選任(83.6%が親族以外)
やめられるか いつでも解約できる 原則やめられない
いつまで 自分で決める 本人が亡くなるまで
そして生命保険には、同じ「本人が請求できなくなる」リスクに対して「指定代理請求特約」が用意されており、その保険料は不要(無料)です。一方、預金の凍結にはこれに相当する仕組みがなく、凍結後は成年後見がほぼ唯一の道になります。
生命保険の加入率は80.0%。これに対し、当編集部が2026年8月2日に公表した調査では、認知症による口座凍結に何らかの対策をしている人は12.1%にとどまりました。
※生命保険料と後見報酬は性質の異なる支出であり、単純な優劣を比べるものではありません。また指定代理請求特約は保険金・給付金の請求に関するもので、預金の引き出しには及びません。
■ 2026年6月、法律は変わった。ただし施行は最長2028年12月
2026年4月3日に閣議決定され、2026年6月17日に参議院本会議で可決・成立した民法等の改正は、この構造に手を入れるものです。「後見」「保佐」を廃止して「補助」に一本化し、いったん始めたら原則として亡くなるまでやめられないとされた現行の運用を見直します。
ただし施行は遅くとも2028年12月24日まで。いま親の口座が凍結されて困っている家庭が使うのは、まだ現行制度です。
IKIGAI TOWN 編集長の塩飽哲生は「年間24万円という数字は小さく見えても、11年続けば283万円になる。6月に法律が変わったのは、この構造が問題だと国も認めたということだ。ただ施行までには時間があり、その間に凍結に直面する家庭は現行制度で判断することになる」と話しています。
■ 続き(92通りの試算・図版3点・そのまま記事化パック)
開始年齢75・80・85・90歳、性別、管理財産額10区分の計92通りの試算を収録したCSV、図版3点(SVG/PNG)、そのまま記事化できる本文パックを下記ページで公開しています。いずれも CC BY 4.0(出典表示のみで改変・転載可・事前連絡不要)です。
▼記事の続き・データ一式
https://ikigai.town/ja/press/2026-08-10/ 開始年齢・財産額を指定した試算、都道府県別の申立件数との突き合わせなどの追加集計も承ります(support@ikigai.town)。
■ 集計方法と使用データ
集計名:成年後見を「口座を動かすため」に始めた場合の生涯報酬額の再計算(IKIGAI TOWN 編集部集計)
集計主体:スペシャリスト・ドクターズ株式会社(IKIGAI TOWN 運営)
使用データ:
最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況 ―令和7年1月~12月―」(2026年3月公表)
厚生労働省「令和6年簡易生命表」(主な年齢の平均余命)
東京家庭裁判所・東京家庭裁判所立川支部「成年後見人等の報酬額のめやす」(平成25年1月1日)
生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2人以上世帯)
いずれも2026年8月10日時点で確認
集計方法:現行の成年後見が原則として本人の死亡まで継続することから、開始年齢の平均余命をそのまま利用年数とし、東京家裁のめやすによる基本報酬(月額)を乗じて生涯報酬額を算出しました。月3~4万円・月5~6万円と幅のある帯は中央値(3.5万円・5.5万円)を用いています。
留意点:
・報酬額は家庭裁判所が事案ごとに決定するもので、本試算は東京家裁の「めやす」に基づく機械的な計算です。管轄によってめやすは異なります
・基本報酬のみで、付加報酬・後見監督人報酬・申立費用は含みません。実際の総額はこれを上回りうることにご留意ください
・親族が後見人の場合は報酬を請求しないことも多く、本試算は親族以外が選任されるケース(83.6%)を想定しています
・低所得の方には、市区町村の成年後見制度利用支援事業による報酬助成がある場合があります
・平均余命は集団の平均であり、個々の利用期間を示すものではありません
・本リリースは成年後見制度そのもの、または個別の後見人・専門職の業務を評価・批判するものではありません
■ ご注意
成年後見・任意後見・信託の設計や申立手続は弁護士・司法書士等の業務であり、当社およびIKIGAI TOWNのファイナンシャル・プランナーはこれを行いません。個別の法律判断・手続については弁護士・司法書士、またはお住まいの市区町村の権利擁護センター・地域包括支援センターにご相談ください。また、特定の金融商品・保険商品の推奨や契約の勧誘を目的とするものではなく、個別の税務判断を行うものでもありません。
■ 会社概要
商号:スペシャリスト・ドクターズ株式会社
所在地:〒105-6923 東京都港区虎ノ門4-1-1 神谷町トラストタワー23階
運営メディア:IKIGAI TOWN(
https://ikigai.town/ja/)
編集長:塩飽 哲生
本件連絡先:support@ikigai.town

配信元企業:スペシャリスト・ドクターズ株式会社
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記事提供:
DreamNews