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外国人介護人材の受け入れと定着 ― 行政・自治体・介護事業者・研究者・参加者がともに考える|保険ニュース

外国人介護人材の受け入れと定着 ― 行政・自治体・介護事業者・研究者・参加者がともに考える


高齢化の進行に伴い、日本では介護人材不足が深刻な社会課題となっています。2040年代には介護人材が約57万人不足すると見込まれており、介護サービスを維持していくための現実的な対応が求められています。こうした状況を背景に、大阪経済大学 経済学部の森詩恵教授は、外国人介護人材の受け入れと定着をめぐる現状や課題を共有し、行政、自治体、介護事業者、研究者、参加者がともに考える場として、公益社団法人全国老人福祉施設協議会の研究助成を受けて、2026年3月15日(日)に第2回となる「外国人介護人材セミナー」を開催しました。

今回のテーマは「外国人介護人材の受け入れと課題」です。2027年4月から運用予定の「育成就労制度」をはじめとする最新の政策動向も踏まえ、それぞれの立場から現状と課題を共有しました。

当日は、厚生労働省 社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室 室長補佐の岡本慎氏が行政報告を行い、その後のパネルディスカッションでは、鳥取県福祉保健部ささえあい福祉局長寿社会課 係長の木下祥吾氏、社会福祉法人尚仁福祉会 副理事長の小倉格氏、大阪経済大学大学院経済学研究科経済政策専攻博士後期課程3年で京都府立大学非常勤講師の馬文博氏が登壇しました。司会は、株式会社ライフケア 代表取締役で衆議院議員の一谷勇一郎氏が務めました。

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介護人材確保に向けた最新の政策動向:厚生労働省による行政報告
セミナーの冒頭では、厚生労働省の岡本慎氏より、日本の人口減少と高齢化の進行を示し、2040年に向けて介護人材不足がさらに深刻化する見通しと、介護人材確保に関する国の政策動向が説明されました。

都道府県の推計を積み上げると、介護職員の必要数は2040年に272万人に達し、現在との差は約57万人に上るとされます。また、これまでは介護職員数は増加傾向にありましたが、2023年から減少、横ばいに転じており、人材確保がきわめて厳しい局面にあることが共有されました。

そのうえで、国の介護人材確保対策として、岡本氏は5つの柱を示しました。介護職員の処遇改善、多様な人材の確保・育成、離職防止・定着促進・生産性向上、介護の仕事の魅力向上、外国人材の受け入れ環境整備です。とくに処遇改善については、本来は3年に一度の介護報酬改定の中で実施するものですが、他職種とのバランスも踏まえ、2026年度に臨時改定を行い、介護職員に限らず介護従事者まで対象を広げることや、生産性向上に取り組む事業者への加算が設けられることなどが説明されました。

岡本氏は、外国人介護人材を受け入れる各制度の特徴を説明しました。EPAは二国間の経済連携に基づく特例的な仕組みで、対象はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国です。在留資格「介護」は、介護福祉士の資格取得者に与えられ、更新回数に制限がないため、長期的な就労につながる制度とされています。技能実習は技能移転を目的とし、特定技能1号は人手不足分野で即戦力を受け入れる制度として、介護分野で人数が増えています。

また、特定技能1号では、日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4相当に加え、介護日本語評価試験への合格が必要であり、介護現場で使う日本語への対応力が求められる点が特徴です。この試験は日本国内だけでなく海外13か国でも実施されており、現地で受験しやすい環境づくりが人材確保の入り口として重要だと示されました。さらに国は、海外での試験実施や日本の介護のPR、自治体・事業者への支援、国家資格取得に向けた学習支援、働きやすい職場づくりへの支援を進めており、14言語対応の無料学習コンテンツや、特定技能評価試験対策、介護専門用語、介護福祉士国家試験に向けた教材整備も進めています。あわせて、都道府県を通じて、コミュニケーション支援や生活支援、資格取得支援、翻訳機器導入への助成など、受け入れ後の定着を支える取り組みも進められていることが紹介されました。

昨年4月から外国人介護人材の訪問系サービスへの従事が認められたこと、介護福祉士国家試験に「パート合格」制度が導入されたことも報告されました。これは、国家試験を複数のパートに分け、一定の水準に達したパートの合格を翌年度以降に持ち越せる仕組みです。就労と学習の両立が難しい受験者にとって、受験しやすい制度に見直す観点から導入されたもので、特定技能1号で働く外国人材にとっても、資格取得への現実的な道筋になります。

2027年4月から運用予定の「育成就労制度」については、技能実習制度に代わる新たな制度として詳しく説明がありました。人材育成と人材確保を目的とし、特定技能制度につながる人材を3年間で育成する仕組みです。個人ごとの育成計画の作成、管理支援機関の許可制によるブローカー的介在・高額手数料問題への対応強化、本人意向による転籍の一定条件下での認可など、労働者の権利保護を強める内容となっています。介護分野は現場理解に時間が必要との観点から転籍制限期間を2年とする方針が示され、2028年度までの5年間で16万人の受け入れが見込まれています。

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厚生労働省 社会・援護局福祉基盤課福祉人材確保対策室 室長補佐 岡本慎氏

多方面からみる受け入れの実態
パネルディスカッションに先立ち、3名の登壇者からそれぞれの立場における取り組みが共有されました。制度の説明だけでは見えにくい、地域や現場での実態が具体的に示されました。
鳥取県の取り組み:地域全体で支える定着支援
鳥取県の木下祥吾氏は、高齢化が進む一方で生産年齢人口が減少し、介護人材の確保が年々厳しくなっている地域の現状を説明しました。そのうえで、外国人材がいなければ介護サービスの維持が困難な状況になっていると述べました。県内の外国人介護人材はおおむね300人程度で、近年は中規模・小規模の法人でも受け入れが拡大し、在留資格も技能実習から特定技能へと移行しています。介護福祉士養成校の2025年度入学生27人のうち15人が留学生と、留学生ルートも重要になっているとのことでした。
県としては在留資格「介護」取得者を増やして長期定着を促すことを重視しており、マッチング支援、2025年度から開始した初期経費の助成、翻訳機器導入支援、介護日本語講座や介護福祉士試験対策講座の整備などを進めています。木下氏は、現場が試行錯誤の中で築いてきた実践を他の事業者にも共有できるよう、受け入れ経験のある施設の見学会や、外国人職員への直接の質問を通じて学び合える場を県として設けていきたいと話しました。
介護現場の実践事例:選ばれ、定着につながる職場づくり
続いて、社会福祉法人 尚仁福祉会 副理事長 小倉格氏は、鳥取県西部の山村地域にある同法人の取り組みを紹介しました。高齢者福祉・障害者福祉を中心に事業を行う法人で、日本人の若い人材の確保がきわめて難しい地域にあるといいます。現在は外国人介護職員9人が在籍し、中国籍3人、インドネシア籍6人のほか、フィリピン出身の職員も日本人枠で採用しています。
中国籍3人のうち2人は、実務経験3年で介護福祉士国家試験に一発合格しており、もう1人も合格見込みだと紹介されました。小倉氏は、外国人職員の一発合格が日本人職員にも刺激となり、学ぶ姿勢の面でも大きな影響があったと述べました。
受け入れにあたっては、タブレット端末やインカムの活用、多言語対応、自転車の貸与、買い物支援、日本語学習会など、業務面・生活面の両方から支援を行ってきました。なかでも買い物支援は、商店が少なく、日常の買い物にも車が必要な地域ならではの取り組みで、週1回ほど車で連れて行く支援を行っているといいます。また、日本でよい経験をしてほしいとの思いから、観光や外出の機会も設けていることが紹介されました。
受け入れによって、人手不足を補うだけでなく、若い人材が入ることで職場に活気が生まれ、日本人職員の外国人に対する見方も変わったといいます。偏見を持っていた職員が、実際に一緒に働く中で印象を変え、高齢の日本人職員が外国人職員に毎日お弁当を作るなど、家族のような関係が生まれている様子も紹介されました。
一方で、文化や感覚の違い、日本語学習への意欲の差、介護への関心の濃淡、SNS上のトラブル、日本の生活ルールへの理解の難しさなど、課題もあると述べました。具体例を挙げながら、ルールを丁寧に伝える必要があると説明しました。
小倉氏は最後に、日本人と外国人を分けず、「同じ職場で働く仲間」として互いに感じられることが定着につながると述べました。職場に残る理由はお金だけではなく、人間関係にもあるとして、知り合いをつくり、信頼し合える関係を築くことが大事だと語りました。
研究からの示唆:定着に必要な包括的支援
京都府立大学非常勤講師の馬文博氏は、2023年から2026年にかけて実施した介護事業者へのヒアリング調査に基づき、受け入れパターンをトップダウン型、積極採用・育成型、留学生ルート型、支援重視型の4つに整理しました。定着に向けては、採用段階での地域生活への適応可能性の確認、受け入れ後の生活面と職場面の両面支援、日本語能力だけでなく意欲・学習姿勢の重視が重要であるとし、生活支援・職場支援・日本語教育を組み合わせた包括的な体制が不可欠であるとまとめました。
パネルディスカッション:参加者との対話から見えた課題
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後半のパネルディスカッションでは、会場の参加者から寄せられた質問をもとに活発な議論が交わされました。

外国人介護人材をめぐる「出稼ぎ」と「移民」の捉え方
外国人介護人材の来日目的について、「出稼ぎ」というイメージがあるが、受け入れ側として移民として受け入れる発想はあるのかと問われました。木下氏・小倉氏からは、来日理由は一様ではなく、本国への仕送りを目的にする人もいれば、日本の文化や生活への関心から来る人も多いと説明がありました。馬氏は、最初の動機が出稼ぎであっても、日本で働き暮らす中で日本を好きになることはあると述べました。一谷氏は、日本政府として現時点では移民政策と位置付けていないとしつつ、日本の経済力が相対的に低下していけば、高賃金を提示できる韓国やドバイとの人材獲得競争の中で日本が選ばれにくくなる可能性を指摘し、受け入れ側の姿勢が問われていると述べました。
採用前に確認したい地域生活への適応可能性
馬氏の報告にあった「地域生活への適応可能性」について詳しい説明が求められました。馬氏は、離島の介護施設の事例を挙げながら、独自の方言や文化がある地域では施設側が地域性を考慮しながら信頼関係を築くことが重要であると説明しました。木下氏は、採用前に本人や家族と直接話し、どのような施設・地域で働くのかを理解してもらうことがミスマッチ防止につながると述べました。小倉氏は、人間関係が密な地域では外部から来た人がなじむまでに時間がかかることもあるとしながらも、地元の日本人職員が橋渡し役となり、地域の奉仕作業への参加や近所への紹介を通じて少しずつ地域との関係が育まれていると話しました。
外国人介護人材の受け入れにおける行政支援の仕組みと日本で働く魅力
鳥取県で現場の声が行政支援につながっている理由について、木下氏は、各施設や介護関係団体から寄せられた声を毎年の意見交換の中で少しずつ反映してきた結果であり、人口が少なく介護人材不足への危機感が強い地域性が後押ししていると説明しました。
日本を選ぶ魅力をどう伝えるかという問いに対し、小倉氏は、給与だけで伝えるのは難しいとしつつ、採用時に「日本に来て何がしたいのか」を必ず聞き、安全な生活環境、地域の良さ、そして仲間や友人ができることが住み続ける理由になると話しました。馬氏は、医療・社会保障の安心感が海外から見ると大きな魅力になり得ると述べ、一谷氏は、日本人にとって当たり前になっている地域の支え合いや人間関係の近さが、日本が選ばれる理由になり得るのではないかと応じました。賃金面だけではない、日本で暮らし、地域の中で支えられながら働くこと自体の価値が、今後の人材確保を考えるうえで重要な論点として共有されました。

パネルディスカッションの最後に、木下氏は「来てもらった後の定着だけでなく、そもそも日本を選んでもらうために何を伝えるかという視点も重要だと気づかされた」と振り返り、馬氏は「日本にはまだまだ素晴らしい点がある。ぜひ多くの人に見つけてほしい」と語りました。
受け入れから定着へ―外国人介護人材を支える視点
今回のセミナーでは、外国人介護人材の受け入れについて、単なる人手不足対策としてではなく、制度、地域、暮らし、人間関係まで含めて捉える必要があることが共有されました。
国の制度整備が進む一方で、実際の定着には、日本語学習支援や生活支援、資格取得支援、地域とのつながりづくり、そして受け入れる側の理解と工夫が不可欠であることが、行政、自治体、介護事業者、研究者それぞれの報告・議論と、参加者からの質疑応答を通じて具体的に示されました。
介護人材不足という社会課題に向き合う中で、本学が開催した本セミナーは、制度の最新動向を共有する場であると同時に、地域において外国人介護人材をどのように支え、定着につなげ、ともに働く社会を築いていくかを考える機会となりました。

関連記事:第1回「外国人介護人材セミナー」― 介護人材不足が深刻化する中、外国人材受け入れの課題を議論

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